スラッシュ水素製造

スラッシュ水素大量製造技術の開発

 
 スラッシュ水素の主な製造方法には、スプレー法、フリーズ・ソー法、オーガ法があります [9, 10]。

 スプレー法では下図に示すように液体水素をノズルで断熱膨張させ固体粒子を製造するが、製造した固体粒子を液体水素と混合する際、大部分の固体粒子が融解するためスラッシュ水素、スラッシュ窒素を効率的に大量製造するには適していない。

 フリーズ・ソー法は実験室レベルでの小規模製造、もしくは中規模製造に適しており、スラッシュ水素を簡便に製造できる。大気圧沸点下の液体水素を真空ポンプで減圧すると、液体水素が沸騰、蒸発し、潜熱を奪うことから液体水素の温度が低下する。三重点に達すると液体水素の液面に固体水素膜が生成し始める。この時、真空引きを停止すると液面上の固体水素の一部が融け液体水素中に沈降するので、攪拌器を用いて固体水素を細かい粒状(数 mm程度)にする。この真空引きと停止を繰り返してスラッシュ水素を製造する。
 実験室では、フリーズ・ソー法を使用してスラッシュ水素、スラッシュ窒素の製造を行っている。スラッシュ窒素の平均固体粒子径は 1.36 mmであった。

 オーガ法では上図に示すように液体水素をより低温のヘリウムガスと熱交換させ伝熱面に生成した固体水素を回転する刃物(オーガ)で削り落とし、細粒状の固体水素を製造する方法です。熱交換器とオーガは液体水素中に設置しているので、製造と同時に固体水素粒子と液体水素を混合できる。液体水素と極低温ヘリウムを連続的に供給すれば、スラッシュ水素を連続的に製造でき、大量製造に適した方法です。オーガと伝熱面の隙間を調節する、もしくはオーガの回転数を調節することにより固体水素粒子径を制御できます。

 ヘリウムブレイトンサイクルを用いた水素液化機とオーガ法を組み合わせて、スラッシュ水素を大量、連続的に製造する場合を水素エネルギーシステム図で既に示しました。

 スラッシュ水素の小規模製造実験に使用した熱交換器とオーガの断面図、製造時の可視化写真を下図に示す [9, 10]。極低温ヘリウムは熱交換器上部から入り、底部で上方へ向きを変えて銅製の伝熱フィンと熱交換する。伝熱面の反対側で生成された固体水素の薄膜は回転するオーガで削り落とされ、固体粒子が製造される。


 オーガ回転数が速いほど固体水素の製造量が多く、製造される固体水素の粒子径は小さくなる。オーガ回転数 80 rpmにおいて、最大固体製造量は 0.062 g/s、50 wt.%のスラッシュ水素に換算して 5.5 l/hの製造量を得ました。小規模の製造実験ですが、大規模製造に向けた技術を取得しました。

 オーガ法を高効率な大量製造法として実用化するには、熱交換器/オーガの性能向上、極低温下で回転するオーガの長期信頼性向上などが今後必要となります。

スプレー法、オーガ法によるスラッシュ水素製造状況

スプレー法ではスラッシュ水素、スラッシュ窒素を効率的に製造するのは難しい